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【弁護士がやさしく教える!得する法律講座】第323号

□□ 相談カテゴリ □□

相続(5)

□□ 相談内容 □□

遺言と違う内容の遺産分割は有効?

先日父が亡くなりました。

葬儀もすませ、気持ちも落ち着いてきましたので、遺産分割のことも考え
なければと思って母と相談をはじめました。

父は、母と二人で暮らしていた持ち家のほか、都内にマンションを1棟
持っていました。

父の家族は母と息子の私だけでしたので、二人で決めようと思って話し合い、
母が今暮らしている持ち家は母親が単独で相続し、都内のマンションは私が
単独で相続することにしようかと話していました。

ところが、父の遺品の中から父の遺書が見つかりました。
その内容を見ると、持ち家も都内のマンションも、いずれも母と私で持分を半分
とした共有にするようにと書かれており、父の知り合いの弁護士が遺言執行者と
して指定されていました。

この場合、遺言内容とは違うのですが、母と話し合ったとおり、持ち家を
母の単独所有とし、都内のマンションを私の単独所有とするとの内容で
遺産分割できないのでしょうか?


□□ 弁護士の回答 □□

相続人全員が合意すれば、遺言と違う内容で遺産を分割することができます。


□□ 弁護士の解説 □□

1 遺言による遺産の分割方法等の指定

一般にも良く知られているように、遺言によって相続分や遺産分割の方法を
指定することができます。

遺言は人の最終意思を尊重する制度であり、遺言によって相続分や遺産分割
の方法が指定された場合には、特別の事情が無い限り、遺言の内容にしたがった
遺産分割がなされることになるでしょう。

2 相続人全員の合意があった場合

では、相続人全員の話し合いによって遺産の処分方法が合意された場合にも、
必ず遺言の内容にしたがった遺産分割をしなければならないのでしょうか。

実務上、相続人全員の間で、遺言の内容と異なる協議が整った場合には、
そのような遺産分割協議も有効であると考えられています。
この場合、遺言内容を変えることはできない以上、相続人間で新たな交換や
贈与等があったと考えることができます。

したがって、相続人全員の合意に基づいた遺産の処分が行われた場合、
たとえそれが遺言内容と異なっていても有効な遺産分割となります。

3 遺言執行者がいた場合

遺言執行者が指定された場合、遺言内容に従って亡くなった人の最終意思を
実現することが遺言執行者の職務ですから、遺言執行者は、遺言内容にしたがった
遺産分割をすすめることになります。

ここで、相続人全員の間で、遺言内容と異なる方法での遺産分割協議が整った場合、
遺言執行者の職務と矛盾衝突が生じることになります。

このような場合にも、実務上、遺言執行者がその内容に同意したものであれば、
相続人全員の間での合意に基づく遺産分割は有効と解されています。

4 遺言の存在を知らないでした遺産分割

ただ、たとえ相続人全員によって遺産分割協議が整ったとしても、それが遺言の
存在を知らずに行われたものであれば、錯誤によって無効とされる可能性があります。

つまり、遺言の存在・内容を知っていたらそのような遺産分割方法には
同意しなかった、といえるような場合には、その遺産分割は無効になる可能性が
あるということです。

したがって、相続人全員の間で、遺言内容と異なる遺産分割協議を有効に
行おうとする場合、相続人全員がその遺言の存在を知り、内容を理解して
おく必要があります。

ご相談の場合にも、あなたとあなたのお母様が、お父様の遺言の内容を
知った上でなお、その遺言とは異なる遺産分割方法について合意するのであれば、
遺言執行者の弁護士の同意を得たうえで、その合意内容にしたがった遺産分割が
できます。